シックハウス対策ノートを読んでみたら、NPOの講習会等でも講師をお願いしたことのある匠総合法律事務所の秋野卓生弁護士が「シックハウス訴訟判例の解説」を書かれている。
シックハウス訴訟は大きく分けて2つの類型に分かれる。
①建物引渡しを受け、現実に当該建物に居住している最中に健康被害が発生する場合。
②建築業者が「健康住宅」をセールスポイントにして販売活動を行ったにもかかわらず、現実には室内空気汚染の発生原因となるような建材を使用していたことが判明し、債務不履行責任が問題となる場合。
①は現実に健康被害が発生していて、これをどのように保護するかと言う問題で、②は現実的に健康被害が発生していないにもかかわらず、契約解除や損害賠償請求が可能かなどが問題となる。
判例の中で私が気になったものをいくつか書き出してみる。
●東京地裁民事第35部平成16年3月17日判決
施工業者が行った内装工事により室内空気汚染が発生し、居住者が化学物質過敏症に罹患した事案。
結論的には施工業者の過失が否定されているが、注目すべきは、平成13年当時の内装施工業者が負うべき法的義務として「被告会社には、工事に起因する室内空気汚染が発生しないように、使用する建材や接着剤を慎重に選択し、施工方法に配慮するとともに、原告に対し、化学物質過敏症の予防対策をとるべき義務があったということができる」と明言していること。
内装施工業者さんは居住者が化学物質過敏症になるような建材を使ってはいけないんです。
化学物質過敏症の原因となる化学物質はホルムアルデヒドだけではないので、F☆☆☆☆だけで建材を選んでいると、あぶないですね。
最低でも指針値設定物質がどのくらい入っているのかくらいはわかって使わないといけないわけです。
●札幌高裁平成17年7月15日判決
控訴人は請負契約の内容として、化学物質による室内汚染のない住宅を建築することが合意されていたと主張し、建物に居住した結果、控訴人はシックハウス被害と言う生命、身体の侵害を伴う損害が生じたとして、損害額5202万0335円を請求したが、この請求額は請負代金3142万5894円を超えるものであった。
控訴人は瑕疵担保責任基づく損害賠償請求をしたが、民法の瑕疵担保責任はこのような生命、身体の侵害を伴う損害賠償まで想定していない。
控訴人が主張する契約の合意の存在が認定できる場合には不完全履行に基づく損害賠償請求ができると判示した。
この判決はシックハウスによる健康被害については不完全履行による債務不履行責任を追及すべきと言う法理を明確にした。
【シックハウス対策】【健康住宅】を売りにしている分譲マンションや建売は多い。
契約の際には今一度「合意の確認」をしないと、あとで問題が起きた時に困ることになる。
以前、小さなお子さんがいるマンション購入を検討中の方からの相談で、シックハウス対策は大丈夫と営業マンが言っているのですが、大丈夫でしょうか?と聞かれたことがある。
心配なら万が一、引渡し前に空気測定をして指針値設定物質が指針値を超えた場合には、施工をやり直すとか契約の解除に応じてくれるのかを確認してみるべきと回答し、相談者が確認した結果は施工のやり直しもしないし、契約の解除にも応じないと言うものでした。
そんなことするところはどこにも無いと言うのが営業マンの回答でした。
この営業マンは【シックハウス対応】とか【健康住宅】ってどういうものを指して言っているのでしょうかね?
これで契約してマンション購入して健康被害が発生したらどうするつもりなんでしょう?
それでも【健康住宅】って言い張るんでしょうかね?
「合意の確認」はきちんと書面で残しておきましょう。
●東京地裁平成17年12月5日判決
マンション販売会社が「環境物質対策基準に適合した住宅」との表示を付けて販売したマンションがシックハウスであった事案で、購入者が瑕疵担保責任に基づく契約解除と損害賠償を主張した。
厚生労働省の指針値以上にホルムアルデヒドが放散していた建物には瑕疵があると判断して瑕疵担保責任に基づく契約解除を認めた。
本件では、FC0、E0、E1を使用するとチラシに書き、実際にチラシ通りの建材が出荷されたことが明確に認定されており、住宅建設業者に過失はないと言うべき事案である。
建材をきちんと選んだにもかかわらず、FC0、E0、E1なのにその性能が低かったために、最終的にホルムアルデヒドが指針値をオーバーしてしまったと言うことで、マンション販売業者側にとっては気の毒な判決となっている。
キャッチャー剤を使ったなんちゃってF☆☆☆☆だとこんな危険もあるんでしょうか。
施工する時には最低でもホルムアルデヒドは絶対に指針値を超えない建材を選ばなければいけません。
その先にまだVOC、TVOCの問題があり、過敏症の方への対応となると、指針値とはまったく別のレベルの話になる。
シックハウスは被害者にとっても加害者にとっても気の毒なことです。
例え賠償請求ができたところで、一度壊してしまった体はなかなか元のようには戻りません。
シックハウスは予防が第一!!
一番の予防策はシックハウスの研究や対策に熱心な良い業者選びかな。。。
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